【OPERA研究者インタビュー】農工大で続くブルーベリー研究で助かる人たちの明日へつなげる
OPERAに関わってくださる教員の中から、若手研究者をクローズアップ。
OPERA研究者インタビュー第2クールのトップバッターとして、
農学府 助教(テニュアトラック)の髙橋 さくら先生にお話を伺いました。
― 農工大に来られるまでの経歴を教えてください。
農工大出身です。親からは浪人してもいいと言われていたこともあり、大学受験は農工大1本でしたが、何とか入学できました。2021年に博士課程を修了し、その4月から産学官連携研究員で1年間研究員になり、今年度助教(テニュアトラック)として採用いただいて今に至ります。
― 大学進学先として農工大を目指した理由を教えてください。
科目の中で生物が好きだったこと、また祖父母が農業をしていたことから農業に興味があったんですね。夏休みに祖父母の家に行って手伝ったりしていました。それで農学部に入りたいなと思ったんです。しかも、両親の方針で独り暮らしはできなかったので、実家から通える関東の近郊、国立大学であることが決め手でした。
― 研究者になろうと思われた理由やきっかけはありますか。
どちらかというと最初から研究者になろうというのではなく、流れの中でこうなったという感じです。もともと小学生の時から理科が好きでしたし、実験も好きでした。大学に入学した時は普通に会社に就職しようと考えていました。研究室配属の頃になって、もう少し研究を続けたいなと思い修士課程に進み、修士に進んだらもっと研究を続けたいなと思って博士課程に進みました。周りの環境やタイミングなどに恵まれていました。ですから、研究者になりたくてなったというよりは、研究を続けたいという気持ちから現在の状況になったというのが正しいかもしれません。研究を続けたいと思ったのは、学部生の時から修士課程、博士課程へ進学を考える時、実験することの楽しさ、結果を出すまでのデータ処理が好きだということと、やはり指導教員の存在が大きかったと思います。実は、研究室配属の時点では別の研究室を第一希望としていました。ただ、そこは希望者が多く移動を促されたんです。そこで、第二希望として気になっていた指導教員の研究室へ移ることにしました。その指導教員がすごく楽しく研究をされる方で、しかも大きな成果を出されていました。その環境の中で私自身も新しい分野(指導教員の分野)で研究する楽しさを感じていました。その経験が研究の道へすすむ大きな一歩になったかもしれませんね。
― 現在の研究内容について教えてください。
学部生の頃から現在まで変わらないテーマとして、低カリウムのブルーベリー果実を生産する研究をしています。例えば、腎臓病患者はカリウム摂取を調整する必要があります。そういった方々へ向けたいわゆる病院食に使われるようなものの研究をしています。同じものとして、レタスなどはすでに普通にスーパーに売っていますし、メロンも最近市販されています。また、現在は、植物工場研究(先進植物工場施設)もあります。博士課程までは自分の研究のメインテーマではなかったですが、研究室として植物工場研究を進めていく中で私も協力していました。今年度から教員という立場になり、植物工場を利用した研究にも力を注いでいく予定です。
― オンとオフ、どう切り替えていますか。
片道1時間半ほど電車で通勤をしているのですが、電車に乗ったらオフと思うようにしています。論文を書かないといけないときなどはなかなか難しいですが、例えば休日はあくまで休日でいられるようにしたいなと思っています。
― 髙橋先生が感じられる農工大の良いところや問題と思うところは。
農工大生活が長い自分が全体的に思うことは、良くも悪くも緑豊かということでしょうか。昆虫類もサイズが大きかったり通常より強かったりします。研究で植物工場にいる時間や外作業の時間がありますが、私が育てているブルーベリーハウスの中で生まれたカマキリが異常に大きく、蚊が強くてジーンズの上からでも平気で刺されます(笑)。
- ブルーベリーには影響はないんですか。
カマキリは大丈夫なので放置しています。アブラムシとかハエなどの害虫食べてくれますので。でも、もちろん多すぎてもダメなので、卵を見つけたらちょっと捨てることもあります。その際に厚手の服装の上から血を吸う蚊に遭遇することが多くありました。研究のためには仕方がないことですが、ブルーベリーの苗木に大きなカマキリを発見することもしばしばです。
― 問題だと思うところはありますか。
農学部に長くいる立場として思うのは、近くに飲食店が少なく食事に困るということです。チェーン店が近くにできるか、生協が充実してほしいと思います。コロナ禍でそれぞれ大変だと思いますが、昼ご飯を食べるのに変化がないです。おいしいお店とかもあるんですけど、ちょっと遠かったりするんですよね。
― 農工大の学生さんはどう見えますか。
基本的にとてもまじめで、頭がいい学生が多いと思います。ただ反面、融通がきかないところがあるかと思います。修士課程に進学した際、指導教員に農工大から進学した学生か他大学から来た学生か、接してみるとわかるよと言われたことがあります。自分もそこまでわかるようになる時が来るのだろうかと思っていますが。農工大生だった自分自身、真面目すぎるところがあると思いますし、実際、人にも言われます。そのまま素直に受け取ってしまうというか、裏を考えるのが苦手というか…色々な場面でもっと発想力が欲しいと思っています。研究者として必要な見方があります。論文を読んでこの人はこういう結果を言ってるけど、別の側面から見たらどうなんだろうみたいなところです。いったん読んだらそうなんだなって受け取るけれど、受け取るだけじゃなくてそこで足りない部分は何なんだろうみたいなところまで発想を常に飛ばさないといけないと思っています。
― 大学でよくお話される先生はいらっしゃいますか。
学科内で研究の近い先生には研究のことをご相談させていただいています。自分が学生だった頃と先生方も変わってますので、学科・専攻の先生方も全員把握しきれてない状況ですが、女性研究者という点では、農学部の女性教員の先生方には自身のご研究とご家庭を両立させている先生もいらっしゃってすごいなと思います。
― これからの夢や目標はありますか。
まだ教員として歩き始めたばかりですが、まずインパクトファクターの高い論文を出すこと、科研費をとることが直近の目標です。研究者なりたてということもあって、科研費も全然取れてないので。学生指導も始まって、来年度は自身の研究室に学生配属もされる予定です。色々と環境が変わって、そういうことに対応することも大事だと思っています。
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<OPERA事務局より>
『教員になることは自分の強い意思があったというより、いつのまにかこうなっていた感じ』と話してくださった髙橋先生。 教員として教育と研究を進めるのにご苦労されているのではと思いましたが、穏やかにそして真面目にこなされている雰囲気をインタビューで感じました。低カリウムのブルーベリー研究で病を抱える方の食の選択肢を増やしていくためにもご自身の研究を突き詰めていただきたいです。
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