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INTERVIEW2023.04.17

(新シリーズ)【OPERA 参画企業研究者インタビュー】 No.1 

本学OPERA参画企業で共同研究に携わる企業研究者の方にお話を伺いました。

 

福武 直樹(FUKUTAKE Naoki)氏
株式会社 ニコン 光学本部要素開発部 技監補 

 

1) ご担当されている共同研究について教えてください。

コヒーレントラマン分光装置の開発を一緒にやらせていただいています。
特にpupil engineeringを使った分光装置で、分光にpupil engineeringを適用した例がないものですから、それを今回初めてやってみようということで、三沢先生と一緒にやらせていただいています。
2週間に1回ぐらいのペースで大学に来させていただいて実験しています。
私自身は理論家なので、理論からのアプローチによって、新しい装置を考案することに興味があります。実際の実験は弊社(ニコン)の若手を連れてきて、若手に手を動かしてもらっています。
私の専門が顕微鏡の結像理論なので、日々新しい顕微鏡や分光装置を理論からのアプローチで考えているのですが、その一部として、農工大様がすでに持っている技術を最大限に利用して、そこに私のアイデアをプラスして開発を行っています。
大学様と協力して、基礎から出口まで一緒にやれたら一番いいですよね。どちらかといえば基礎研究のほうを大学様にお願いしたいわけですけど、現実的には私と協力しながら進めているという状況です。

 

―入社してからずっと、研究での顕微鏡の新しい理論を使ってこられたのですか。

最初は顕微鏡の対物レンズの設計をしていたんです。新人時代に4年間レンズ設計をやって、4本製品化しました。その後、会社には属したまま東京大学大学院に行かせてもらい、博士号を取得した後、また会社に戻りました。そこから研究内容が変わって、結像理論に集中しています。ですから、もう20年ぐらい結像理論をやっています。

 

2)大学との共同研究が利点と思われている点はどんなところでしょうか。

利点は刺激を常に受けられるところです。大学と企業でお互い数人の小規模のセミナーが開ければいいかなと思いますね。そこには弊社の若手も連れていきたい。ただ、大学の先生方はお忙しいですから、実働の先生に加えてスタッフが何人か、そのぐらいの規模でしょうかね。ただ、学生さんに関しては、共同研究として責任を負わせられるかどうかという問題があります。
あえて、こじんまりとした小規模のセミナーで共同出願するつもりでディスカッションする。農工大と弊社のみであれば共同研究契約を結んでいますから、やりやすいわけです。ただし、ここに他企業様が混ざると、恐らく劇的に開催が難しくなります。

 

3)こういう大学とであれば共同研究を一緒にできるというポイントはありますか。

私は、「人」がサイエンスを作ると思っています。テクノロジーもエンジニアリングも、です。まずは「人」と仲良くやらないと、うまくいかないですね。ですから、共同研究については、大学のネームバリューで選ばずに「人」で選んでいますし、会社もそれを推奨しています。付き合って馬が合う、合わないがありますから、そこが結局一番効くと思うんです。楽しく毎日研究がやれるかどうかで、何年続くかが決まると思っています。
また、同じところに問題意識を持っている人とは話が合いますので、そういう人とはやっていきやすいです。大学の先生方はきちんとアンテナをお持ちですから、質の高いディスカッションになります。それはお互いにすごい刺激になります。脳が活性化して、いいアイデアが生まれやすくなります。

 

 

 

4)OPERAのようなコンソーシアム(複数企業・大学が参加する共同体)へ参加することについて、良い点・懸念点・要望など教えてください。

他企業を含んだ大きなプロジェクトの最も良いやり方っていうのは分からないですね。一番簡単なのは一大学と弊社の二者間のプロジェクトになります。農工大のOPERAはコンソーシアムだけれども、二者間の共同研究契約に基づいているコンソーシアムであることなどを会社に説明して、納得してもらっています。
積極的に企業が参加しようと思うのは、例えば10年後にものすごいことが起こりそうなポテンシャルを持っているプロジェクトですね。他企業さんや大学さんからいっぱい知識を吸収できて、10年後弊社もビジネスのほんの一部でも生み出せるような。
出口が見えていて、10年か20年後かにシェアの一部が弊社でも取れるという、そんな期待感。オプティクスの中からそんな分野が提案されていて、それが10年後には爆発的になるぞというような期待感があればよいと思います。
オプティクスの最近の成功例で言いますと、OCT(Optical Coherence Tomography: 光干渉断層撮影)が産業的、ビジネス的に成功していますよね。OCTも爆発的に流行ったのはここ20年ぐらいで、学会に行ってもそこのセッションだけ教室からあふれていましたから。そのような光景から、一気にビジネスとして成長していきました。そういうものだったら多分、コンソーシアムが出来るんじゃないかなと思います。そのアイデアを見つけなきゃいけないのですが、おそらくそれはシーズから出てくるんですね。ニーズはたくさんあるんです、少なくとも潜在的ニーズは。でも、シーズがないとやっぱどうにもならないですし、基礎的なシーズはやはり大学から出てくるものだと思っています。20年かけるぐらいの覚悟の基礎研究が大学から始まって、それがほんとに20年後に産業として成功するのではないでしょうか。

 

― 今回のOPERAのような形の参加の仕方は、他のプロジェクトと比較していかがですか。

企業が税金を投入された国プロに参加しようとすると、対応する専門の支援室のような組織がないため、事務的な対応が大変です。一方、大学には専門部署がありますし、OPERAに関してはそういう部分を大学側が引き受けてくれているので、それは参加しやすいところになっていると思います。

 


===インタビュアーから=======================================================================
今回インタビューさせていただいた福武様には前回シンポジウムでも講演者として登壇いただきました。領域のコア技術を支える企業研究者として、研究を支えてくださっています。
大学と企業のそれぞれの想いをコンソーシアムの中で混ぜ合わせて醸成し、10年後20年後につなげるものを増やすことができるような取り組みを一層すすめなければと感じました。

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